DCF法では、「フリーキャッシュフロー」という概念を使います。
フリーキャッシュフロー = 営業利益 × (1-法人税率) +減価償却費 - 運転資本増加額 - 設備投資額
フリーキャッシュフローは、営業利益から法人税相当分を差し引いた純利益に減価償却費を加えます。そこから売上債権及び棚卸資産と買入債務の差額である運転資本の増加額を控除した営業キャッシュフローから、さらに、固定資産に対する投資である設備投資額を控除して計算します。つまり、事業に必要な支出をした後の、債権者や株主に分配することのできる金額を指しています。
【残存価値(Terminal Value)の算出】
例えば5年間の収益計画を立てたとしても、それ以降も企業はキャッシュフローを生むと考えると、5年目以降のキャッシュフローを価値算定に含める必要があります。これを残存価値と言います。
残存価値= 継続可能フリーキャッシュフロー(FCF)×(1+永久成長率)÷(割引率-永久成長率)
実務的には、「継続可能キャッシュフロー」は収益計画の最終年の数字を用います。また、収益計画以降はゼロ成長であると仮定をして、
収益計画最終年のキャッシュフロー÷割引率
で算出することも多くあります。
今まで説明してきたことを踏まえてDCF法で価値算定を行うと、例えば下記のようになります。
この「1847.7」が事業価値です。
ここから、有利子負債額を控除することで、株主資本の価値(時価総額)が算出されます。
株主資本の価値÷発行済み株式数=株価
DCF法には下記のデメリットがあります。
- 将来の収益計画がそもそも不確実
- 割引率によって現在価値が大きく変わってくる
- 残存価値が現在価値の大きな割合を占めるため、この数字の取り方が企業価値に大きく影響する
DCF法は、客観性に課題が残るため、実務的には、企業価値を算定する際には、時価純資産と収益還元、DCFのそれぞれの数値からレンジを取ります。
これらの企業評価は、M&AやIPOをするときだけでなく、第三者割当増資による資金調達をする際に算出する必要があります。
税理士等に頼んだり、相手に算出してもらったりすることもできますが、まずは簡易でいいので自社の価値を算出することをおすすめします。