【スキーム2】合併と株式交換
合併と株式交換とは、完全に買収をされるという点で共通しています。異なる点は売却側の「法人格」がどうなるかです。
株式交換の場合は、買収先の100%子会社となりますので、法人格は存続します。
合併の場合は、買収先に完全に吸収されることになりますので、法人格は消滅します。
合併のメリットとリスク
【メリット】
(買収側)
・1つの会社となるので、統合効果が出やすい
・間接部門を統一することができ、組織面で合理化できる
・自社の理念や文化を統一できる
・買収資金が不要
(売却側)
・買収先が上場会社の場合、株式を現金化できる
・信用力が増す(買収先の信用をそのまま使える)
【リスク】
(買収側)
・文化や風土、待遇によって人員が流出する等、統合に時間がかかることがある
・派閥ができることがある
(売却側)
・株式の交換となるので、すぐに現金は入らない
・合併比率が不利になると、手元に入る現金が減ることがある
・自社の社会的存在が消滅する
株式交換のメリットとリスク
【メリット】
(買収側)
・買収資金が不要
・株主総会の特別決議で可決されれば、100%の株式を取得することができる
・100%コントロールができ、かつ別法人格のため、無理かつ早急な統合施策を打つ必要がなくなる
・会社間の資金のやり取りによってグループ間の利益の調整がしやすい(節税対策)
(売却側)
・買収先が上場会社の場合、株式を現金化できる
・信用力が増す
・法人格を残すことができる
【リスク】
(買収側)
・間接部門コストが別々にかかる等統合効果が合併より出にくい
(売却側)
・株式の交換となるので、すぐに現金は入らない
・統合比率が不利になると、手元に入る現金が減ることがある
【合併及び株式交換の留意点】
- 手続きが煩雑である
合併及び株式交換の場合は、第三者割当増資は株式移動に比べて手続きが煩雑になります。
具体的には、株主総会特別決議、書類の備置・閲覧、反対株主の株式買取請求、債権者保護手続等の厳格な手続を踏む必要があります。
債権者保護手続きには1か月間がかかるので、株主総会の招集手続きと合わせると時間もかかります - 合併(交換)比率で話が頓挫することがある
第三者割当増資や株式買収の場合は売却先の企業評価だけで済みますが、合併や株式交換の場合は買収先の企業評価をする必要があります。
2社の株価を比べて比率(売却先1株につき買収先●株を割り当てる)を決めるので、交渉がまとまらなくなることがあります。
「100%支配による統合メリット」が合併と株式交換のスキームのキーワードです。