[022]聞き手が前のめりになるビジネスプランの差別性

前のめりになるビジネスプランに必要な要素として、「差別性」があります。言うまでもなく、「他の企業や他のサービスとは何がどう違うのか」ということです。

以下の3つが、よく経営者が口にする「前のめりにはならない」差別性の例です。

(1)「特許を保有しています(あるいは特許出願中)」
特許を持っていればその技術は押さえられる」のは確か。でも、世の中では類似の技術を使って類似の商品を開発することは日常茶飯事です。新技術が他社で開発されたらその特許は縛りになりません。もちろんあったほうがいいですが、「特許申請中!」と赤字で書かれていても「ふーん」という感じで終わってしまいます。

(2)「競合はいません」
今の世の中で競合がいないビジネスなんて信じられません。そのビジネスそのものの、競合はいなかったとしても周辺まで広げれば競合はいるはずです。そもそも、もし本当に競合がいないビジネスだとすると、そのビジネス自体の展開が難しいのかもと思ってしまいます。他社が興味関心のない分野か、やってみてうまくいかなくて撤退したかもしれない。そんな風に考えてしまいます。

(3)「ニッチな分野なのでシェアをすぐに獲得できます」
例えば200億円規模のマーケットで、シェアを50%とると売上100億円。どんなにがんばっても売上200億円。ニッチはベンチャー企業としては参入しやすい分野ですが、それだけでは差別性にはなりません。

一方、以下の3つを押さえると、聞き手は「前のめり」になります。

(1)大きなマーケットでの「市場的認知シェア」がすぐに取れそうな「匂い」がすること

アメリカの数学者であるクープマンが「シェアの目標値」を提唱しています。
73.9%: 独占的市場シェア
41.7%: 相対的安定シェア
26.1%: 市場的影響シェア
10.9%: 市場的認知シェア
消費者にブランド等の存在を認知してもらえるシェア
6.8%: 市場的存在シェア
市場において存在を許されるシェア。

ベンチャー企業でいきなり独占的市場シェアをとることは現実的ではありません。短期的に10.9%のシェアを取れるだけで十分魅力的。1000億市場でも109億円になるのですから。

シェアを取れそうな「匂い」を醸し出すために最も効果的なのは、「小さくてもいいから売上見込みがほぼ確定していること。」売上見込みリストがあると説得力が増します。大きいマーケットほど、参入企業も多く、最初の一歩が踏み込めない。「これから売る」のと「すでに売れている(見込みがある)」のとでは雲泥の差があります。

(2)「必要だけど誰もやりたがらない」サービスであること
例えば「手間がかかる」「効率的でない」「標準化できない」というサービスは大手がやりたがらない。ベンチャー企業の多くはこれに目をつけて、サービスを提供しています。

(3)マネジメントのクオリティ
ここでいうクオリティとは、経営陣の事業に対する経験や考え方の柔軟性、ビジョン、バイタリティ、熱意、意欲、金銭感覚、嗅覚、ストレス耐性、器の大きさ等を言います。
ビジネスはプランどおりには行くことなどほとんどありません。修正を何度も走りながら行って形にしていくものです。もちろん始める前に差別性が何もなければそのビジネスで他社に勝つことはできません。本当に大切なのは、マネジメントが市場環境や競合の動きを敏感に察知してその都度差別性を修正、加工、創造していくことです。

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