M&Aと一言で言っても、様々な方法があります。それぞれにメリットとリスクがあるので、何回かに分けて紹介していきます。
【スキーム1】第三者割当増資と株式移動
第三者割当増資と株式移動は、シンプルで手続きも比較的簡単なことから、M&Aの中でも最も活用されるスキームです。
第三者割当増資とは、新たな株式等を発行して特定の第三者にその株式を売却する方法です。株式を購入する者は対価として会社に対して現金を支払います。
株式移動とは、既存株主の株式を特定の第三者に売却する方法です。株式を購入する者は対価として売却する株主に対して現金を支払います。
第三者割当増資のメリットとリスク
【メリット】
(買収側)
・会社にお金が入るので、会社に対して成長機会を提供することができる
・希薄化を考慮に入れた際に、株価をディスカウントすることができる
(売却側)
・資金調達を兼ねることができる
【リスク】
(買収側)
・100%株主になることはできない
・既存株主を排除することはできない
(売却側)
・既存株主の株価が希薄化(一株当たり株価が低下)することがある
・希薄化する分、株式移動に比べて株価が安くなることがある
【その他】
・株主総会の特別決議が必要(譲渡制限会社の場合)
株式移動のメリットとリスク
(買収側)
・株式を100%買収することが可能 ※全株主が合意した場合
・条件交渉が比較的簡単(株価交渉がメイン)
(売却側)
・既存株主にとっては、株式の現金化ができる
・会社にとっては、不要株主を排除することができる
(双方)
・手続きが比較的簡単 (取締役会決議)
【リスク】
(買収側)
・会社には現金が入らないので、買収後に新たな資金提供が必要となる場合がある
・複数の株主がいる場合、1人1人の同意を得なければならない
・株主の意向が大きいものの、取締役会での承認が必要(譲渡制限会社の場合。例外あり)
(売却側)
・株主の意向が重要視されるため、株主の移動が会社の意向にそぐわないケースもでてくる
・会社にとっては不要株主を排除できる以外に直接的なメリットはない
第三者割当増資にするか、株式移動にするかのスキームの選択のリアルなポイントは、
- 会社の資金需要がどの程度か
- 株主の売却意思がどの程度か
となります。
もちろん、一部の株主の株式売却と第三者割当増資を合わせて買収をするケースもあります。
買収側、売却側、株主側の三社の利害関係を考えてスキームを固めましょう。