会社を上場させるときに重要かつ時間を要するのが、「経営管理体制の整備」です。
未上場企業の多くはオーナー企業であり、社長を中心とした経営管理体制になっています。上場する場合は、社長は組織の一機能にすぎず、会社全体として経営を管理する体制づくりが必須になります。
具体的には以下の体制整備が必要となります。
1.コーポレートガバナンス制度の整備
「コーポレートガバナンスとは」をご参照ください。
[132]コーポレートガバナンスとは(1)~
2.定款・諸規定の整備
社内規程は会社の業務が組織的に運営されるために必要なルールを明文化したものであり、上場審査では社内規程の整備が適正に行われていることと、実際に有効に運用されていることがチェックされます。
3.会社組織の整備
コーポレートガバナンスが十分に機能するためには、内部統制が構築されていることが必要です。上場会社としてのリスクヘッジ体制及び安全性を確保するために、各組織内および組織間に内部統制システムの整備と運用が求められます。
4.意思決定機関の整備
社内管理体制の骨格となるのは会社の機関です。上場までに、取締役会、監査役会・監査等委員会または指名委員会等、および会計監査人の設置が必要です。
5.利益管理制度の整備
上場会社は、投資家に対する利益還元責任や社会的責任を果せるかどうかを投資家保護の観点から厳しく問われますので、上場審査においても利益管理制度の整備は最も重要視され、運用状況は上場承認の直前まで厳しくチェックされます。
利益管理制度は、①長期的経営ビジョンを実現するための中期的な利益計画や行動計画を含む中期経営計画の策定、②中期経営計画の信頼性を担保するための年度予算の編成、③年度予算を達成するための予算統制から成り立ちます。そして、予算統制は、月次を管理サイクルとして、部門単位等に細分化した予算単位での制度整備と運用が求められます。
6.月次決算制度の確立
会計制度では、経営判断の基礎となる月次決算情報を、正確かつタイムリーに経営陣に提供できる体制を確立することが必要です。
7.業務管理制度の整備・運用
上場審査では、主要な業務処理手続についてはフローチャート等をもとに審査されます。また、経営管理組織の業務分掌と権限を適切かつ明確に規定し、内部牽制を有効に機能させることが必要です。内部牽制とは、一つの業務処理等に組織間または組織内で2人以上が、横断的または縦断的にかかわることにより、業務フローで生じる不正や誤謬を未然に防ぐ機能のことをいいます。
8.内部監査制度の整備
内部監査制度とは、経営者に代わって社長直属の担当責任者が、各部門の行う業務が法令、社内規程、経営計画等に準拠して遂行され、効果的かつ効率的な経営が行われているか否かをチェックして、業務改善に資する情報を経営者にフィードバックする制度をいいます。上場審査では、内部監査制度は原則として1年間の運用実績が求められます。
9.労務管理の整備
上場審査では会社の継続性、成長性、健全性及びコンプライアンスの観点から、人事制度や労務管理の状況を確認されます。
10.会計制度の整備
非上場会社の決算は、一般的に法人税法等の規定を中心とした税務会計に基づいた処理が行われていますが、株式上場を目指す場合には、企業会計原則を頂点とした企業会計に関する諸法規、規則および日本公認会計士協会の各種報告書等から、一般に公正妥当な会計処理基準に準拠した会計制度を確立する必要があります。