[093]株式で資金調達をする際のリスク~株主の権利~

資金調達の手法の一つに、「第三者割当増資」があります。
会社が新株を発行して、第三者に新株を売却してお金を得る手法です。
株式会社の場合、第三者に株式を売却した時点でその第三者は「株主」となります。
「株主」は様々な権利を持つことができます。

大きくは「自益権」と「共益権」に分類されます。

「自益権」とは、株主個人の利益にのみ関係する権利で、配当を受ける権利(利益配当請求権)、増資の場合に新株を引き受けられる権利(新株引受権)、会社解散時に残った財産の分配を受けられる権利(残余財産分請求権)、会社合併の際に保有株式を買い取ってもらう権利(株式買い取り請求権)などがあります。

一方、「共益権」とは、株主が会社の経営に参加し、会社の経営を監督・是正する権利です。共益権は、一単元株でも保有していれば認められる単独株主権と、一定数の株式の保有が必要な少数株主権があります。
単独株主権には、株主総会における議決権、株主代表訴訟の提起権、取締役の行為の差し止め請求権、新株発行の差し止め請求権、株主総会の決議取り消しの訴えの提起権などがあります。

少数株主権は以下の通りです。

  • 1%以上:株主総会の議案提案権、株主総会検査役選任請求権
  • 3%以上:総会招集請求権、役員の解任請求権、業務財産検査役選任請求権、会計帳簿閲覧請求権
  • 10%以上:解散請求権
  • 33%超:株主総会の特別決議を単独で阻止できる
  • 50%超:株主総会の普通決議を単独で成立させられる
  • 66%超:株主総会の特別決議を単独で成立させられる

保有株式数が多い人ほど、経営への影響力が増すということです。

ここに、第三者割当増資による資金調達のリスクがあります。
新株をたくさん発行すれば、資金調達の金額も大きくなります。一方で、たくさん発行するほど、株主の権利が第三者に移ります。
このバランスを考えないと、経営に悪影響が出て、最悪なケースでは事業を進めていくことができなくなります。

例えば、33%超の株式を1人が保有した場合、特別決議を否認できます。
特別決議で決めなくてはならない事項は、定款変更、取締役・監査役の解任、会社の解散・合併、事業譲渡、資本の減少等があります。
例えば、定款に記載されている事業目的、商号、本店所在地、発行株式総数、株式の譲渡制限に関する定め、取締役の任期などを変更したくてもできなくなるということです。

自分(及び自分の近親者)の持ち株比率を維持することを最優先に考えてくださいね。

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