本評価は「マーケットアプローチ」とも呼ばれており、自社の事業と似ている上場会社の時価総額(株価×発行済み株式数)から自社の評価をする手法です。
一般的には、以下の指標を用います。
- PER(株価収益率): 時価総額÷当期純利益 または 株価÷一株当たり当期純利益
- PBR(株価純資産倍率): 時価総額÷純資産 または 株価÷一株当たり純資産
- EV/EBITDA倍率: EV(有利子負債+純資産ー現預金)÷EBITDA(税引前利益+特別損益+支払利息+減価償却費)
【手順】
- 類似会社をピックアップする(3社以上)
- 類似会社のPER、PBR、EV/EBITDA倍率を算出する
時価総額は、平均値または中央値を採用する - 類似会社の各指標の平均値を算出する
- 自社の当期純利益、純資産、EBITDAに類似会社の平均値を使用して企業価値を算出する
★IPOの際の株価評価について
IPOの際の株価評価でよく使われるのは「PER法」です。最近は予想PER15倍が目安となっていますが、上場する時期や業種、市場によって差があります。実際には、類似会社の1年程度の平均PERを参考にIPO時のPERを算出することが多いです。
★未上場ディスカウントについて
未上場株式の場合、上場株式に比べて流動性がほとんどないので、類似会社批准方式で算出された評価額からディスカウントをします。
一般的にはディスカウント率は20-30%と言われています。
ちなみにIPOの際の株価算定においても、20-30%のディスカウントをしています。これを「IPOディスカウント」と呼びます。
IPOディスカウントをするのは「IPOをする際に投資家が買いやすくするため」という目的が大きいです。
この、「市場環境によるPERの変化」と「IPOディスカウント」は、経営者にとっては不利になることがあります。
過去には、市場環境が悪くPERが10倍を切った時期もあります。IPOディスカウントも考えると「株価が安すぎる」として上場を延期した企業もありました。上場を延期しないまでも、自分の持ち株を売ることを辞めた経営者もいました。
類似会社比準方式は、数字自体には客観性があり、企業の収益性を類似会社の「株価」という指標で算出している点でわかりやすく、企業評価の方法として最も活用されています。
一方で、「どの類似会社を選ぶか」や「株価のデータ期間をどれだけ取るか」によって数値が大きく変わることに注意してください。