会社分割とは、既存の会社(分割会社)を他の既存の会社(承継会社)または新設する会社(設立会社)に分割する手法を言います。
合併や営業譲渡と比較されることがありますが、以下の点で異なります。
- 一部の事業を分割して承継会社に統合することができる点で合併とは異なる
- 個別の資産負債を譲渡する営業譲渡と異なり、会社分割では包括的に承継会社に統合することができる
- 適格分割の場合は簿価引継ぎが可能
- 会社分割の場合は債権者保護手続きが必要になる(営業譲渡では不要)
スキームとしては、買収側にとっては欲しい事業を包括的に自社もしくは新設会社に完全統合することができ、かつ現金を支払う必要がないところから、利用メリットの高いスキームであると言えます。
会社分割のメリットとリスク
【メリット】
(買収側)
・会社分割の効果は包括承継なので、営業譲渡のような契約関係、権利義務、従業員等を承継させるための個別の手続(契約の締結し直し等)が不要
・営業譲渡と同様に、欲しい資産負債を選んで買収することができる
・合併と同様に、一つの会社に統合されるので、事業シナジーが出やすい
・株式の交付により、キャッシュが不要
(売却側)
・買収先が上場会社の場合、株式を現金化できる
・信用力が増す(買収先の信用をそのまま使える)
・適格分割になれば、簿価引継ぎが可能になり、課税がかからない
【リスク】
(買収側)
・基本的には事業に必要な資産負債を引き継ぐので、簿外債務のリスクは残る
・株主総会の特別決議が必要
(売却側)
・株式の交付となるので、すぐに現金は入らない
・統合比率が不利になると、手元に入る現金が減ることがある
・株主総会の特別決議、債権者保護手続きが必要
・残された事業では会社の継続が困難になる場合がある。銀行等が了承しないリスクがある。
【適格分割の必要要件】
- 金銭交付がないこと
- 株主シェアに応じた株式交付がなされていること
- 分割会社の分割事業に係る主要な資産及び負債が引き継がれること
- 分割会社分割事業に係る従業者の概ね80%以上が引き継がれることが見込まれていること
- 分割会社の分割事業継続が見込まれること
【株式分割の手続き】
- 分割契約締結
- 労働者保護手続き(分割会社)
- 株主総会の特別決意(両社)
- 債権者保護手続き(両社)
- 株式買い取り請求(両社)