メンタルヘルス対策の中で、管理監督者の役割は重要です。管理監督者によるメンタルヘルスケアを「ラインによるケア」と言います。
1.管理監督者による部下への接し方
(1)「いつもと違う」部下の把握と対応
ラインによるケアで大切なのは、管理監督者が「いつもと違う」部下に早く気付くことです。 そして、「いつもと違う」部下に対しては、管理監督者は職務上何らかの対応をする必要があります。
ただし、病気の判断は管理監督者にはできませんので、管理監督者が「いつもと違う」と感じた部下の話を聴き、産業医のところへ行かせる、あるいは管理監督者自身が産業医のところに相談に行く仕組みを事業場の中に作っておくことが望まれます。
「いつもと違う」部下への気付きと対応は、心の健康問題の早期発見・早期対応として、きわめて重要です。
(2)部下からの相談への対応
職場の管理監督者は、日常的に、部下からの自発的な相談に対応するよう努めなければなりません。具体的には、以下のような対応をしてきます。
○ 話を聴く(積極的傾聴)
○ 適切な情報を提供する
○ 必要に応じて事業場内産業保健スタッフ等や事業場外資源への相談や受診を促すなど
上記の対応を管理監督者ができるようになるためには、事業者が管理監督者に部下の話を聴く技術を習得する機会を与えることが重要です。
(3)メンタルヘルス不調の部下の職場復帰への支援
復職者は、「職場では自分はどう思われているのだろうか」「職場にうまく適応できるだろうか」「病気がまた悪くなるのではないだろうか」など、様々な心配をしながら出社しています。そうした復職者の気持ちを受け止めることが、管理監督者には望まれます。
2.職場環境等の改善を通じたストレスの軽減
(1)職場環境等へのアプローチのポイント
職場環境等の改善として、アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、次のとおり職場環境等の改善を通じたストレス対策のポイントを挙げています。
① 過大あるいは過小な仕事量を避け、仕事量に合わせた作業ペースの調整ができること
② 労働者の社会生活に合わせて勤務形態の配慮がなされていること
③ 仕事の役割や責任が明確であること
④ 仕事の将来や昇進・昇級の機会が明確であること
⑤ 職場でよい人間関係が保たれていること
⑥ 仕事の意義が明確にされ、やる気を刺激し、労働者の技術を活用するようにデザインされること
⑦ 職場での意志決定への参加の機会があること
(2)職場環境等の改善の5つのステップ
効果的な職場環境等の改善の手順は以下の5つです。
ステップ1.職場環境等の評価:現状調査を行う
ステップ2.職場環境等のための組織づくり::当該職場の上司、産業保健スタッフを含めた職場環境等の改善のためのチームを編成する。
ステップ3.改善計画の立案:産業保健スタッフ等、管理監督者、従業員が参加して討議を行い、職場環境等の改善計画を検討する。
ステップ4.対策の実施:決定された改善計画を実施し、進捗状況を確認する。
ステップ5.改善の効果評価:現状調査を再度実施し、改善がなされたかどうか確認する。十分な改善がみられない点について計画を見直し、実施する。