M&Aはよく、「時間を買う」戦略だと言われています。
一から新規事業を立ち上げたり、経営改善をするには時間もコストもかかるので、その期間を「今動いている事業」を買うことですぐに自社収益化をし、経営改善を実行できるという考え方です。
具体的には下記の目的でM&Aを考えることになります。
- 戦略実行を加速する
新規事業の場合、3年で収益化できたら大成功で、実際には3年たってもキャッシュフローは赤字だったり、そもそも回収のメドがつかず撤退もやむなしになったりするケースが多いです。M&Aにより、より短期間に戦略目標を達成できる機会を得ることができます。 - 垂直統合
オペレーションフローにおいて、仕入先や卸先(小売店やネットショップ等)を統合することを「垂直統合」と言います。
仕入先や卸先とは常に価格や条件交渉があり、利益率が左右されます。垂直統合をすることで、グループとしての収益性を考えることができ、オペレーションフローとしても無駄を省き効率的に運営をすることが可能になります。 - 市場での地位改善
競合他社を買収することで、マーケットシェアが上がります。マーケットシェアが上がると、業界内での競争力や顧客に対する信用力が上がります。 - 経営改善
人員の整理、オペレーションフローの見直し、組織の統廃合、クロスセルの実施等で経営改善が期待できます。 - 経営陣の交代、人員増強
買収先に優秀な経営陣がいる場合、買収することで自社の経営体制が強化できます。売却側にとっても、買収先の経営陣が自社の経営を行うことで、経営改善が期待できることがあります。
経営陣に限らず、例えばIT企業の場合、買収によってエンジニアを獲得することができます。 - 財務面でのメリット
相手の資本構成によっては、資本コストが下がることがあります。また、相手の財務状態によっては、借入余力が増大できます。
買収先がキャッシュリッチの場合は、ネットの買収資金が少なくて済みます。例えば、買収金額10億円として、現預金が5億円あれば、実質的には5億円で買収したことになります。
「時間を買う」観点でM&Aを実行する場合には、「新規事業を立ち上げるコスト」「経営改善に必要なコスト」と「買収金額」とを比較して検討していきます。これを「リプレイスメントコスト」と言います。
さらには、買収金額を何年で回収できるかも重要な判断要素となるでしょう。3年で買収金額を回収できるとすれば、大成功です。