経営者の高齢化に伴い、近年「事業承継」がクローズアップされています。
日本政策金融公庫総合研究所が 2016 年に公表した調査によれば、調査対象企業約 4000 社のうち 60 歳以上の経営者の約半数(個人事業主に限っていえば(約 7 割)が廃業を検討していると回答しています。そのうち廃業を予定している企業に廃業理由を聞いたところ、「当初から自分の代限りで辞めようと考えていた」(38.2%)、「事業に将来性がない」(27.9%)に続いて、「子供に継ぐ意志がない」「子供がいない」「適当な後継者が見つからない」といった後継者難を挙げる経営者が合計で 28.6%に達しています。
これらの企業の多くは業績が悪化しているのではく、誰かが事業を引き継いてくれれば事業は継続できる可能性が高いと思われます。
そこで、事業承継をスムーズに進める取り組みが国、行政をはじめとして推進されています。
事業承継とは、会社のオーナー経営者が第三者に事業を引き継ぐことを指します。具体的には、以下の3つの類型があります。
1.親族内承継
現経営者の子供をはじめとした親族に承継する方法です。
一般的に他の方法と比べて、内外の関係者から心情的に受け入れられやすいこと、後継者の早期決定により長期の準備期間の確保が可能であること、相続等により財産や株式を後継者に移転できるため、所有と経営の一体的な承継が期待できるといったメリットがあります。
一方で、近年は子供や親族が承継をすることに躊躇するケースが多く、全体の割合は減少しています。
2.役員・従業員承継
「親族以外」の役員・従業員に承継する方法です。
経営者としての能力のある人材を見極めて承継することができること、社内で長期間働いてきた従業員であれば経営方針等の一貫性を保ちやすいといったメリットがあります。
親族以外の承継の際の税制も整備されてきており、近年は割合が増加しています。
3.M&A等による社外への引継ぎ
親族や社内に適任者がいない場合でも、広く候補者を外部に求めることができ、また、現経営者は会社売却の利益を得ることができる等のメリットがあります。
ただし、最適な相手を見つけ、条件交渉をし、手続きをするのに数か月から数年かかることが多いので、M&A等による社外への引継ぎを考える場合は十分な準備と時間的余裕をもって取り組まねばなりません。
いずれにしても、承継には時間を要します。早めの準備をするようにしましょう。